二次創作をしている私はカップリングオタクなので、推しカプの雰囲気を感じさせるイメソンというものが好きではあるんですが。本来まるで別の意図をもって作られた曲に対してイメソンと呼称するのは、あまり好きではなかったりもします。
面倒くさいオタクだな。
そんな推しカプイメソンとして、現状MUCCの「ニルヴァーナ」を超えるものが見付かっておりません。
https://www.uta-net.com/movie/126286/
この曲も某アニメのタイアップなので、イメソンと言ってしまうと複雑な気持ちにはなります。でも少年少女の恋愛ソングとしてあまりにも最高である事は間違いないんですよね。
●ムックというバンド
私は所謂バンギャとしてヴィジュアル系の音楽を好んで聞いているのですが、そこそこ歴が長いので「初期のムック」を知っていたりします。
MUCCは長らくムックという表記でした。バンド名もメンバーのヴィジュアルも得体の知れない不気味な感じで、とりあえず「密室系」というジャンルのバンドである事は知っていました。密室系とはcali≠gariの青さんが作った密室ノイローゼというレーベルの所属バンドの事を指していて、まあcali≠gariとムックしかいないんですけど。
私はアルバム「朽木の灯」あたりからよく聞くようになりました。ヘヴィなサウンド、ダークな歌詞と世界観は当時ひとつの流行だったかと。それがVo.逹瑯さんの声質とマッチして、多分ひとつのバンドとしての完成系でしたね。アルバム冒頭の曲「誰も居ない家」から「遺書」の流れは凄かった。
ただ私が本格的に好きになったのはその次のアルバム「鵬翼」なんですけど。ダークな世界観はそのままに、所謂五弦ベース音の響くヘヴィさみたいなものはなくなりました。初期にあった歌謡曲っぽさを取り戻した感じもあり、音楽性の説明が難しいアルバムです。中でも私は「雨のオーケストラ」という曲が大好き。これはカラオケでオタクの前で歌うと必ず曲名を聞かれる名曲で、タイトル通りオーケストラバックの湿った失恋の歌になっています。
●ムックからMUCCへ
そんなムックがバンド名をMUCCに変えたあたりから、なんとなく雰囲気が変わってきたんですよね。暗かった世界観に少し光が差してきてしまったというか、とにかく私には受け入れ切れなかった。
だから私はしばらくMUCCから離れてしまっていたんですが、そこで件の「ニルヴァーナ」がリリースされました。
密室でもノイローゼでもなくなったし、キラキラしてる、というのが率直な感想でした。タイアップされたアニメは見ていてもOPは直視できず、歌詞もろくに見ていなかった。
私のムックについての思い出はここで一旦終わります。
●サブスク
そこからかなりの年月が経ち、音楽のサブスクリプションサービスにより昔の楽曲も気軽に聞けるようになりました。AIが勝手に色々な曲を提案してくる中、私はニルヴァーナと再会します。
とても良かった…
心境の変化って凄いですね、この時の私には曲も歌詞もすんなり受け入れる事ができました。聞けば聞くほど良さが増して、聞く度に新しい発見がある。
ただ、どうしてMUCCが、どうしてミヤさんがこういった光ある明るい曲を書いたのかはよくわからないままでした。アニメとのタイアップだからなのか、それにしてもどこか腑に落ち切れない。
しかし私のその違和感は正しかったんだという事が、後に判明します。
●真相
そう、この曲は東日本大震災の直後に作られた曲なのだと、ミヤさんのその時の心境を表した曲なのだと。
絶句した。
壊れた世界の隅っこなのも、行き場がないのも、きみがいない夜に心が痛むのも、全部紛れもない現実だったんですよ。
MUCCはどこまでいってもムックでした。
ヴィジュアル系バンドの楽曲って色々な流れがあるんですが、そのひとつとして「辛く悲しい現実も逃げずにも向き合って乗り越えていくべき」みたいなマインドがあります。それは世間の「汚いものには蓋をしろ」という考えへのアンチテーゼなわけですが、ニルヴァーナの歌詞も「見えないものを見せる」という意味でスタンスは変わっていなかった。汚いものを見ようとしない世の中の影を見せるのか、辛く苦しい現実に見えない光を見せるのか、それだけの違いだったんでしょう。
●音楽性
この曲の明るいエレクトロサウンドも、疾走感のあるバンドサウンドも、世の中に溢れた重い空気に対するアンチテーゼ的な意図でバランスを取ったんだと思います。
それによく聞くとバンドの演奏としては結構激しい方なんですよね。逹瑯さんの歌うメロディがゆったりしてるから気付きにくいんですが、ベースもドラムも結構騒がしくて動きが細かい。ギターもムックの曲ではあまりなかった派手目なソロパートがちゃんとあるし、そもそも曲としてのBPMが180ある。
多分これもMUCCだから生み出せた曲なんだろうし、もうひとつのバンドとしての完成系なんだと思います。
ヴィジュアル系バンドだからこそ見せられる〝光〟って事なんでしょうね、この曲は。
それはそうと、最近のMUCCに関する情報が全然ないんですよね。ミヤさんが京さんたちとPetit Brabanconで活躍しているのは知っているんですが。MUCCとして69の日にライブはやるのかな?
まあ多分、秋に開催するルナフェスにはまた出てくれるんじゃないでしょうか。私も行くつもりなので、今のMUCCが観られるのを楽しみにしていようかと思います。